ドクターMの「美と健康のかかりつけ医」ブログ

2020.05.06

本音で語る美容医療の教科書「美容皮膚医療~ホントのところ~」読んでみました。

アクティビティの低い今年の連休ですが、普段できない自宅でのバーベキューだとか、部屋の掃除だとか、買ったままの本を読むだとか、ちょこちょこやっている間に、「えっ、もうこんな時間!」となります。

「YOU TUBEでも見ようかな」と思って何気にパソコンの前に座ると、あっという間に2時間くらい経過してしまいます。

外に行けないからといっても、暇で暇で時間を持て余すことは決してありません。

ヒトは易きに流れますので、どこかで自分を律しないと、生産性のない「ダラダラ」生活を送ってしまいますね。

 

というわけで、脳みそがとろけないように、美容皮膚医療の教科書を読んでみました。

「美容皮膚医療~ホントのところ~」

「教科書」と言いましたが、表紙のとおり、内容はお堅いものではありません。

美容皮膚医療の第一線でご活躍されている日本国内の著名な先生方に、「現在のリアルな美容皮膚医療のノウハウ」を執筆していただき、さらに主催した宮田成彰先生とのディスカッションが掲載されています。

本のタイトル通り、「美容皮膚科医の本音」がきっちり書かれておりました。

このあたりは絶対にインターネット上では手に入れることができない真の情報なので、書籍代の14,000円は、むしろ格安と思われるほどでした。

 

この本の中で、細かなノウハウ以外で、各先生に学んだことは、

①医療の世界では本当の意味での「正解」は一つだけではなく、ゴールは同じでも、やり方は複数あること。

②「100%の効果、0%の副作用」の美容医療はないこと。

③まだわかってないこと、最先端の医療をもってしても解決できない領域があること。

 

日本のトップレベルの先生方でもそうですから、末端の我々たるや「推して知るべし」です。

ただし、当たり前ですが患者さんは「100%の効果、0%の副作用」を期待されますので、現実とのギャップが生じます。

理論上はうまくいくはずが現実はそうとは限らないので、実臨床というのは難しいですね。

近い将来は、様々な臨床データを入力するとAIが判定して、

「ハイ、このレーザー治療によってあなたの肌が期待通りに改善する確率は○○%です。」なんて出るのでしょうか?

このあたりは想像がつかないですが、満足度というのは極めて個人個人の感覚に依存したアナログ的な側面ありますので、数値化は難しいとは思います。

 

治療対象が「個別の皮膚」であって均一なものではないだけに、治療効果に差が出るのは当然なのですが、心情的には「こんなにお金払ったのに、効果がないなんて、困る!」となるわけです。

この「個別の反応の違い」は、なにも美容医療の世界だけではなく、一般的な医療の現場でも日常に見られます。

例えば、花粉症の薬ですが、何種類もあって処方する側も迷うほどです。

化学式上では「効果の強い、弱い」で分類可能で、「AよりもBのほうが効きやすい」という「傾向」はある程度分かっているのですが、実際のところは「飲んでみなけりゃ、わからない」です。

そのあたりは、最近の患者さんは理解されている方が多く、以前ほど説明には困りませんし、仮に1回目の処方が効果なくても、コスト的には数千円以下のレベルなので、あまりクレームになることもありません。

躊躇なく「効果なかったら、次、行きましょ」と他剤をトライします。

 

反面、美容医療は、施術単価が高いので、「効果ありませんでしたね、次、行きましょ」と軽く言われると、患者さんは「えーっ!なんで~!」みたいな反応になってしまいます。

そのコストの壁、効果がでるまでの時間の壁を乗り越えたところに、実はゴールがあることも多いのですが、患者さんには医師の言い訳みたいに聞こえてもしようがありません。

 

でも、真面目な医師ならば、治癒率および満足度アップのためには、常にアップデートを怠らず、間違っていたと思ったら修正する努力は惜しみません。

そのためには、やはり医師である自分自身が患者さんの肌と直接向き合わないことには、診断能力、施術能力が上がりません。

脱毛レーザーなどの一部を除いて、ほとんどの施術に関して、ナース任せとせず、私自らが施術するのはそのためです。

ナースに指示出して、あとはお任せで、ベルトコンベアーの上に患者さんが乗って、安い料金でバンバン数をこなしていくほうが商業的にはうまくいきますので、ほとんどのクリニックがその体制を敷いています。

ゆえに、当院のような小さなクリニックで大きなクリニックと同じ医療機器を揃えて、しかも週に3回しか予約外来がなく、さらにはドクターが一人一人に施術をしている状況は、経営的にいうとダメです。

 

しかし、最近では、当院のように「内科・美容皮膚科」の併設だけでなく、「小児科・美容皮膚科」、「泌尿器科・美容皮膚科」、なかには「整形外科・美容皮膚科」のクリニックも散見されるようになりました。

美容皮膚科のニーズが高まると同時に、「ちょっとうちもやってみようか」的なお考えのクリニックもあると聞きます。

それはそれで、競争が働いて、レーザー機器も安くなり、施術単価が安くなるのは、消費者の皆様にとっては願ったり、叶ったりです。

あとは「質の担保」ですが、こればかりは医師の経験と努力しかありません。

 

私が本格的に美容医療を始めて、もう6年がたちます。

一般医療でもそうなのですが、5年ぐらいで自分の専門領域の知識を一通り身に着け、経験も十分積むことができます。

さらに5年経過して10年目になると、さらに上のレベルに到達し、自分の専門領域では「エキスパート」になります。

6年経過したぐらいでは、時間的にはまだまだ「エキスパート」ではないのでしょうが、この6年で得た知識と経験は倍の12年分ぐらいはありそうな感じです。

先に紹介した「美容皮膚医療~ホントのところ~」を読んで、「そうそう、先生もそう思ってたのね」と同意するところも多くあり、「ああ、知らん間に、結構、経験値アップしたなぁ」と手前味噌ながら、そう思いました。

この6年間で、東京日帰りの研修などに費やした時間とコストは、確実に私の血となり肉となっていました。

あとは、それを患者さんに還元できるか、どうかです。

「医療は不確実なもの」という厳しい現実を受け止めながらも、その中で「治療効果を少しでも上げる」ための工夫をこれからも続けたいと思います。

 

このブログ、夜中に目が覚めて書き始めて、気づけばもう5月6日の朝5時です。

昨日、かしわ餅、食いそびれました。

ところで、「子供の日」があるのに、「大人の日」がないのはなぜなんでしょう?

でも、あったら、あったで、その日にやることに困りますね。語感の響きに若干問題アリです(笑)